深川八まん山ひらき
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名所江戸百景 No.68深川八まん山ひらき

 深川八幡の正しい名前は富岡八幡宮である。この社は、ここより東の砂村にあった八幡宮を、寛永六年(1624)に長盛法印なる者が、幕府から六万坪を越える土地を拝領し、ここへ移転したものである。
 江戸時代は神仏混淆(こんこう)の時代であり、神社の境内に神宮寺(別当寺)が建っている所が多く見られた。深川八幡も、西隣にあった永代寺を別当寺としていた。永代寺は承応二年(1653)に京都の真言宗仁和寺の末寺となった寺で、広大な境内と、子院六寺を有する江戸屈指の大寺であった。
 永代寺の周囲には堀が回っており、広大な境内には池が設けられ、池の周囲には見事な石組みや小丘が築かれており、その上模造富士まであった。樹木は松の木が多かったが、桜、柳、楓も植えられて美しい景観を呈していた。
 永代寺は毎年3月21日の弘法大師空海の忌日には、空海の影像を祀って供養する御影供(みえいく)を催した。永代寺はこの日山門を開き、境内の庭を江戸市民に公開した。これを山ひらきと称していた。この山ひらきは4月15日まで続けられたが、最も人が群集したのは最初の日であったという。
 深川八幡には、もう一つの山ひらきがあった。それはこの絵に描かれている模造富士の山ひらきである。この山ひらきは、本物の富士山の山ひらきに合わせて行なわれ、江戸市民達は、五月晦日から六月朔日にかけて、境内へ入り模造富士へ登ることが許された。この山の登山者は大人というよりは、女性、子ども、老人たちが多かったという。

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