逆井のわたし
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名所江戸百景 No.67逆井のわたし

 江戸時代初期に、江戸から下総国佐倉へ行く佐倉街道は、日本橋を出て隅田川を本所へ渡り、竪川の堤の上の道を東進し、逆井の渡しで中川を渡っていた。そのためこの街道を歩いて行った人は、中川を渡るには、逆井の渡しを渡し舟で渡らねばならなかった。
 竪川というのは、深川の小名木川と平行して、その北の本所に隅田川と中川とを結んで東西に掘られた堀割である。竪川とは、江戸市中に対して竪方向に掘られた川をいい、これに対して、江戸市中に対して横方向に掘られた川を横川といった。もともとこの地域は湿地帯であり、掘割は、湿地帯から水を排したり、掘って出た土で湿地帯を埋めるために掘られたものである。この竪川が中川とTの字型に接続した所を逆井口といい、ここに中川を渡る逆井の渡しがあった。江戸から舟で来た旅人たちは中川を渡り、直接対岸の西小松川村の渡し場まで行って船を下り、そこから佐倉街道へ上ることができた。
 逆井という名前は、江戸湾が満潮になると中川の水が逆流してきて、この辺りの支流へも流れ込んだので付けられた地名という。また、江戸時代から有名な青菜の「小松菜」は、小松川村が産地である。
 逆井の渡しはこの絵の右上方に描かれ、渡し舟が二艘見えている。この絵はのどかな田園を流れる中川と、葦が茂った辺りに舞い降りて遊んでいる白鷺を描いている。
 因みに、元禄時代になると、千住大橋や新宿の渡しを経由する街道を佐倉街道と呼ぶようになったので、古い方の街道は、元佐倉街道になった。

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