江の島は、江戸時代には手近な行楽の地として、多くの江戸ッ子たちによって賑わった。この図のように往時は橋ではなく、舟を利用するか引潮に直接島に入る海の道があったという。ここでは引潮を待ちうけていたかのように、豆つぶほどの旅人たちがいずれも島へと向っている。
北斎は櫛比する参道の屋並みを細かく描き、その奥に塔をのぞかせている。島の周囲の海面は波一つなく穏やかで、白く抜かれた水面の点苔が陽光を感受させて好ましい。シリーズ中、細やかな描写の目立つ一図といえるだろう。
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