画面の右下には瓦屋根を大きく描き、左に向かつて登り坂を配しながら、二本の大きな樹木が天に聳えている。その後方の平地には櫛比する屋根と、雪をかぶった富士が山容をみせているが、天空を広くとっているので、全体に奥行きのある景観を表出させ、高台の場所であることも看取させる。
駿台は、現在の御茶ノ水駿河台のことで、当時は富士見坂と呼ばれる富士眺望のすぐれた坂があったという。画面中央の崖下に流れる川は、神田川であるとみられる。
ちなみに、坂道を往来する人々は、農夫、武士、小僧、物売り、旅人など多彩であるが、誰一人として富士に気を留めていないことと、男性ばかりであるのは何か北斎の意図することがあるのだろうか。
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