高輪うしまち
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名所江戸百景 No.81高輪うしまち

 高輪は北は芝、南は品川、東は袖ヶ浦に臨む東海道に面した片側町であった。町屋が海側になく、陸地側のみにあったのでこの様に言われた。幕府は宝永七年(1710)に、東海道を通って、江戸市内へ出入りする人馬や荷物を検問するため、高輪大木戸を設けた。しかし度々類焼に遭ったので廃止されたが、大木戸だけが残っていた。江戸市民の間では、京都方面へ上る旅人たちを見送るにも、また帰ってくる旅人たちを出迎えるのにも、高輪の大木戸まで出掛けて来るのが普通であった。
 高輪の大木戸から南へ四丁(440m)ばかりの片側町が牛町と言われた。寛永十一年(1634)に、幕府が芝増上寺の境内に、家康の像を安置する安国殿を建立した折、京都より牛持人足を大勢呼び寄せ、材木や石類の運搬に当たらせた。さらに同十三年には、市ヶ谷見附の土橋を普請した折にも、さらに多くの牛持人足を呼び寄せて普請に当たらせた。寛永十六年にこれらの工事が終わった後、人足たちは高輪に土地を与えられて定住することが許された。東海道の沿道には、車置場と牛小屋が並んで立っていた。このためこの地は車道と名付けられた。牛町はその俗称であった。
 この絵の車輪の背後に、防波堤のような土塁が見える。これは実際には品川砲台で、徳川幕府が、米国のペリー提督が率いる艦隊の攻撃から、江戸を守るために築いた砲台である。(参照 名所江戸百景No.28)
 この絵のように、車輪を前景に置いた構図は、フランスの印象派の画家ドガの油絵「競馬場」の中にも見ることができる。

高輪うしまち


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