玉川堤の花
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名所江戸百景 No.42玉川堤の花

 玉川上水は、江戸へ水を供給するために掘られた水路である。多摩郡羽村で玉川の水を取り入れ、開渠で武蔵野を通って、内藤新宿近くの四谷大木戸まで引き、それ以後は暗渠で江戸の各地に配水された。
 甲州街道の最初の宿場である内藤新宿では、玉川用水は街道の町並みの裏と、大名の内藤駿河守の下屋敷やその家臣たちの屋敷との間を流れていた。玉川上水の堤の各所には吉野や常陸桜川など、日本各地から取り寄せた桜の木が植えられていて、桜の名所となっていた。
 この絵は玉川上水を挟んで、右に内藤新宿の遊女屋、茶屋、旅籠屋などの家々の裏側が、また左側には内藤家の武家屋敷が描かれている。また両者の間を流れている玉川上水の堤の上には満開の桜並木があり、その下に、武士、老若男女の町人、手習いの師匠に率いられた弟子たちなど、桜見物を楽しんでいる色々な種類の人々が描かれている。
 この絵の二階建ての家は、遊女屋のようである。内藤新宿は遊女屋の多いことで知られた宿場であった。開放された二階の窓から、客と一緒に桜を見て楽しんでいる赤い着物を着た女性は遊女のようである。この宿場の遊女は、もともと旅籠屋で働く飯盛女(めしもりおんな)であって、客の給仕をするかたわら、売春もしていた女である。飯盛女は、宿場女郎ともいい、その人数の多い旅籠屋が遊女屋と呼ばれるようになった。内藤新宿の飯盛女の人数は幕府が管理していたので、この宿場に幕府準公認の遊廓があったともいうことができる。

玉川堤の花


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