墨田河橋場の渡かわら竈
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名所江戸百景 No.37墨田河橋場の渡かわら竈

 橋場の渡しは、浅草の橋場から向島の寺島まで通じていて、千住大橋が架橋されるまでは、奥州街道がこの渡しを渡っており、隅田川最古の渡しであった。この絵の中に、この渡しを互いに行き違っている2艘の渡し舟が描かれている。
 橋場の由来は、鎌倉幕府を開いた源頼朝が、下総国から武蔵国へおもむく時、海女の釣舟を数千艘集め、3日間という短時日に浮橋を作って軍兵を渡したからだと言われている。
 昔、東国流浪中の在原業平がこの渡しにさしかかり、川にいる鳥の名前を渡し守に尋ねたところ、都鳥という返事が返ってきた。そこで業平が詠んだ和歌が「名にしおはば いざこととはん 都鳥 我が思ふ人は ありやなしやと」である。都鳥とは、ゆりかもめの雅称であり、広重はその鳥を隅田川に描いている。
 橋場から南の山谷堀までの川端を今戸といい、ここに瓦を焼く竈が幾つか並んでいた。竈で火を焚くと火事を起こす危険性があったので、幕府はこの川端のみに竈を設けることを許した。この絵には、竈から空高く立ち上る灰色の煙が、前景に大写しにして描かれている。ここで焼かれた瓦を今戸瓦といった。その他蚊取り、招き猫、稲荷の狐、火鉢、土瓶、食器、人形などの「今戸焼」と称する瀬戸物が焼かれていた。
 隅田川の対岸には水神の森と、その右手背後には大堤に咲いた満開の桜の花が描かれている。

墨田河橋場の渡かわら竈


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