深川万年橋は、現在の江東区内の小名木川に架かる橋で、北斎は晩年の一時期にこの近くに居住していたことが知られている。そのためか、おそらく何度も実見していたであろう橋梁全体を真横から幾何学的に捉え、さまざまな人たちの往来を細かく描写している。一方橋下は、まるで別の風景画のように富士と街の景観をみせ、違和感なくー図に収めるという趣向をみせているのである。このような画面構成は河村岷雪の『白富士』中の「橋下」でも見い出せるが、それを一段と臨場感あるものとしているのが本図といえよう。
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