犬目峠は、甲州街道の犬目宿と野田尻宿の間に位置する峠で、桂川に沿ったこの場にまで来ると、西南の方向に雄大な富士山容を望むことができたという。画面は隠やかな春か秋の季節のようで、北斎は全体をゆったりとした筆致をみせている。前面にはなだらかな坂道が続き、小さく描き込まれた旅人や荷馬は山間の風景を楽しむかのように、語らいながらゆっくりと歩を進めている。坂道の背後は深い谷ででもあるかのように一面霞み、その向こうに大きく富士を描いて、すばらしい眺望を強調しているのである。
シリーズ中では、季節感満点なー図ということができょう。
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