円座の松は別に笠松とも呼ばれ、現在の渋谷区神宮前の禅寺、龍巌寺にあった松の老木である。江戸郊外の名所として、江戸名所案内の本にも紹介されているので、当時は近郊のレクリエーションの場として多くの人々が訪れたのであろう。画面でも右下には三人の男が毛氈をしき、弁当をひろげて盃を交わしており、また親子連などもみられる。
北斎は円蓋状の松を小山のように描写し、ややななめ後方に富士を大きく配している。その間には、たなびく霞が描かれ、広々とした空間が違和感なく表現されていて、全体の色調共に清々しい季節の様子を横溢するのに成功させているといえるだろう。
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