全身を使って材木を投げ上げる男と、それを受け取ろうと腕をのばして構える男。
その傍らには一心に大鋸をひいている男など、北斎が好んで度々描いている職人たちは、生彩ある表現をみせている。
本所立川(堅川)は、北斎出生の地である割下水にほど近い運河で、現在の両国千歳辺にあたり、往時は運搬に便利な両岸に材木置き場が多くあったといわれる。この図からも、そうした材木置き場の様子が窺えるが、揃中では実に丹念な描写をみせており、画面全体に長さや太さの異なる材木を縦横に描き分けて構成の面白さをみせながら、中央に空間をとって遠近感をもたせているのはさすがというほかない。
ちなみに長い材木の向から覗く富士山容以外、ほぼ大半が直線で表現されいるのも、画面効果をねらった綴密な計算によるものである。
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